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最高裁判所第一小法廷 昭和42年(し)26号 決定 1967年8月31日

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、別紙特別抗告申立書記載のとおりである。

しかし、記録によれば、現在被告人が勾留され、その取消を求めているのは、昭和四二年二月一四日付の住居侵入、窃盗の罪につきなされた勾留状によるものではなく、同月二五日付の放火未遂、放火の罪につきなされた勾留状によるものであって、同勾留には所論の違法は認められないのみならず、同勾留は同年三月六日付の公訴提起によりすでに起訴後の勾留となっているのであるから、右放火未遂、放火についての本件勾留を維持するか否かは、現在では裁判所の審判の必要という観点から判断さるべきものであり、原決定によれば、現段階においても被告人には刑訴法六〇条一項所定の勾留理由があるというのであるから、かかる事実関係のもとにおける本件の場合においては、起訴前の段階における勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、現在における本件勾留の効力に何ら影響を及ぼさないものである。したがって、本件放火未遂、放火の捜査中の勾留並びにこれに先だつ前記住居侵入、窃盗についての勾留の違憲を前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠き、いずれも刑訴法四三三条の抗告適法の理由に当らない。

よって、同法四三四条、四二六条一項により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎)

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